Reminiscence -追憶-

愛してはいけない人 愛されてはいけない人

81 先生との電話

城谷先生から連絡先をもらって三ヶ月が過ぎた。

 

 

なかなか決心がつかなかった。

 

 

 

 

なにか理由をつけて電話しよう。そう思っていたところに大学の受験についての話が出始め、その話をしようと思い電話をすることにした。

 

電話の子機を手に取る。

 

 

 

プルルルルプルルルル。

 

 

「もしもし。」

 

 

七ヶ月ぶりに聞く城谷先生の声。

感慨にふけってしまう。

 

 

「ん?もしもし。」

 

「あ、あの宮沢です。」

 

「おお、宮沢さんか。誰かと思った。びっくりしたよ。元気か。」

 

「はい。先生も相変わらずお元気そうですね。電話番号ありがとうございました。」

 

「おお、でも遅いよ。電話くれないのかと思ったよ。悪かったな。高一が終わらないうちにやめちゃって。」

 

「いえ。でもびっくりしました。急なことだったし。」

 

 

なんやかんや話しているうちに、近々会うことになった。

80 手紙④

手紙を出してから三週間。城谷先生から手紙の返事が来た。

 

 

 

 

 

宮沢梓葵様

手紙ありがとう。

元気にしてますか。

宮沢さんに英語を叩き込むと言ったのに、何も言えずに退職してしまって本当に申し訳なかった。

俺は今も英語の教員をしています。そしてバレー部の顧問になりました。

電話番号を教えます。

英語のこと、バレーのこといつでも連絡してください。

 

 

 

 

 

電話番号をもらったが、先生に電話していいのか悩みしばらく連絡できなかった。

78 手紙②

私も文系コースに進んだことで美輝とはまた同じクラスになった。

 

 

 

「そうそう、この前城谷先生に会ったんだよ。部活の試合に来てさ。」

 

「えっそうなの。元気だった?」

 

 

 

城谷先生に会えたなんて羨ましい。

 

 

 

「それで梓葵のこと気にしてたよ。頑張ってるかって。」

 

 

 

 

 

やっぱり消えていなかった。私の中の赤いインク。

77 手紙①

城谷先生がいなくなってからも英語は続けた。

 

恥ずかしくないように。

 

 

 

 

 

 

高校二年生。

 

 

 

 

また桜の季節。去年は前髪を切り過ぎたんだった。

 

 

新任の先生紹介。

 

 

 

もうどこにも城谷先生の姿はない。

 

 

 

なんでいなくなってしまったんだろう。どうして。

 

それを繰り返してもう四ヶ月がが過ぎた。

76 突然の別れ②

優しかった城谷先生がいなくなるなんて想像もつかなかった。

 

 

英語を教えてくれるって言ったのに。

 

やっと英語が好きになったのに。好きになれたのに。

 

 

 

泣いている子もいた。

 

 

私は不思議と涙は出なかった。

 

 

 

 

城谷先生が辞めたことに関して様々な噂が立った。

 

 

生徒を殴った。事故を起こした。生徒と付き合っていた。結婚した。

 

 

 

どの噂も私には信じられなかった。

 

 

 

 

新年。

美輝は城谷先生に年賀状を出したという。しかし返ってこなかったと。

 

 

私は先生に年賀状を出さなかった。

 

 

 

 

 

 

書けなかった。

75 突然の別れ①

十二月終業式。

 

 

かなり寒い。

指を擦り合わせる。

 

 

集会堂の埃っぽさにはもう慣れた。

 

 

 

校長先生の話は相変わらず長い。

 

 

 

「ええと、最後にお辞めになる先生がいらっしゃいます。」

 

 

こんな時期に、誰だろう。少しざわついた。

 

 

 

 

 

 

「英語の城谷柚先生です。」

 

 

 

誰。

 

嘘だ。城谷先生なわけない。

 

 

 

 

「二学期いっぱいで退職されます。今日はご都合によりいらっしゃれなかったのでお別れの言葉は手紙で頂いているのでお読みします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

約十ヶ月の短い期間でしたがありがとう。とても楽しい時間でした。みなさんこの言葉を覚えておいてください。必ず将来役に立ちます。本当にありがとう。

 -Where there's a wil, there's a way.

 

 

 

 

 

本当に突然の別れだった。