2017-11-10から1日間の記事一覧
球技大会当日。 美輝が城谷先生と写真を撮る。 いつもだったら絶対に言わない。言えないけれど勇気を出して言う。 「先生、一緒に撮りましょう。」 美輝は私が城谷先生のことを好きとは知らない。しかし颯爽と私のカメラをもち写真を撮ってくれた。 嬉しい。…
そうだ。 心のどこかで否定していた。先生だし、相手にされないし。 私が好きなのは数学で英語じゃないし。 私の中には赤いインクのようにすでに広がっていた。もう消せない。洗ってもとれない。 虹を描くのは数学だと思っていた。 本当は城谷先生だった。英…
それから私は何かと職員室に行くようになった。 ノートを提出しに行ったらパソコンとにらみ合う城谷先生を一瞥する。 部活のことで柏先生に呼ばれた時も城谷先生の席に目を向ける。 城谷先生はいなかった。 「宮沢ってさ、城谷先生のこと好きだよね。」 空気…
十月の球技大会に向け、本格的な準備が始まる。 夏休みの部活がない期間に集まり、近隣の方に招待のチラシを委員会の生徒と顧問の先生達で配る。 近隣、先生チームと生徒で毎年球技大会の最後に試合が行われるのだ。 私もチラシを配りに行く予定だった。 そ…
「ちょっと全然違うじゃん。」 美輝は文句を言っている。 美輝のはおじさんのキャラクターが散りばめられている葉書。 「梓葵、部活前に城谷先生のとこ問い詰めに行こ。」 私は美輝に葉書を見せたことを少し悪かったかなと思う。 美輝は城谷先生に突っかかっ…
夏休み。 夏休みと言っても美輝も私もほとんど学校で部活がある。 夏は普段の練習よりもとびきりきつい。 暑いしのども渇く。なによりも汗が尋常ではない。 体力の消耗は著しい。 毎日会うが、部活の先輩にも顧問の先生にもそして城谷先生にも暑中見舞いを出…
手帳を開く。 城谷先生の字。 綺麗な字とは言えない。ごつい字。 その字を見てにやける。指でなぞってみる。 変態みたい。 なにしてるんだろ。 私。
美輝は文系コースに進む。 私はまだ悩んでいた。 もうすぐ夏休み。その前に進路を決める。 バレー部でもバスケ部でも先輩と顧問の先生に暑中見舞いを出さなければならない。 住所を聞きに美輝と職員室に行く。 美輝は城谷先生のもとへ、私は柏先生のもとへ。…
もうすぐ進路届けを出さなくてはならない。なぜ頑張れたのか。 私は英語は嫌い。 嫌いだったのかも。でも嫌いではなかったのかも。 きちんとやったことがなかっただけ。 そう。 どうしてきちんとやろうと思ったんだろう。 先生の教え方わかりやすかった。 英…
その日英語の教科書を家で開いた。 久しぶりに。 まっさらな教科書。書き込みも何もない。 授業中に寝ているわけでもないのに。 次の日から私は城谷先生に質問攻撃をし始めた。 分からないことを基礎の基礎から。 どんなに馬鹿げた質問でも城谷先生は答えて…
「なんでか聞きたい?」 「聞きたいって言うか。まあ、そうですね。」 「なんだよ、それ。長くなるけどちゃんと聞けよ。俺さ、宮沢さんと同じ歳の頃理工に行きたかったんだよ。特に理由はなかったんだけど。それと実は英語が大の苦手だったんだ。」 「え、そ…
高校入学して初めての中間試験。 予想通り英語は最悪。 そして担任面談週間。 職員室で柏先生との面談が始まる。 「宮沢、この前の中間テストどうだった?」 「英語が悪いですね。」 「悪いって言うか、終わってるね。」 笑顔でキツイことを言う。 刀の花び…
痛っ。 首。寝違えた。 宮沢梓葵。25歳。 すごく懐かしい人を思い出した。 城谷先生。 手に握っているのは手紙。城谷先生からもらった手紙。 電話番号が書いてある。 探そう。古い携帯電話。高校生の時に使っていたもの。
学年旅行最終日。 主任の先生の話が終わり、昼前に栃木を出発した。 行きと同じようにサービスエリアで休憩を取り、昼食はそこで自由に食べる。 美輝と私は昼食をすぐに食べ終え、売店を見ていた。 そこには城谷先生がいた。 美輝は先生を見るや否や昨日の話…