54 犬⑥
城谷先生は部活の怪我した先輩に問題がないとわかり、学年旅行に合流できたのだそうだ。
その場では時間がなくあまり話すことができなかった。
夜。消灯時間を過ぎた。
今晩は私たちが美輝たちのグループに行くことになり、ゾロゾロと見つからないように廊下を歩いた。
美輝たちの部屋に着き、私たちはカードゲームをする。
皆だんだん眠くなり、ゲームメンバーが減る。
美輝は学年旅行のしおりを開いてにやにやしている。
「美輝ちゃん、なにしてるの?」
聞くと、美輝は皆が滞在している部屋番号のページを見せてきた。
「城谷先生、一人部屋だよ。内線かけようよ。」
私は美輝と違って大胆なことはできない。それでも今日だけはいいかと美輝に賛同した。
プルルルル。
「はい、もしもし。」
「城谷先生、私です。本田です。」
「本田かよ。消灯とっくに過ぎてるぞ。」
「先生今一人ですか。梓葵ちゃんと部屋行ってもいいですか。」
「おう、一人だけど。まあいいか。バレないように来いよ。」
美輝はこちらを向いて親指と人差し指でOKサインを出した。