64 暑中見舞い①
美輝は文系コースに進む。
私はまだ悩んでいた。
もうすぐ夏休み。その前に進路を決める。
バレー部でもバスケ部でも先輩と顧問の先生に暑中見舞いを出さなければならない。
住所を聞きに美輝と職員室に行く。
美輝は城谷先生のもとへ、私は柏先生のもとへ。
「宮沢、英語頑張ったじゃん。なんか頑張れる理由でもあったのかな?」
唐突な質問に顔が赤く熱くなるのを感じた。
なんでこんなこと聞くのだろう。
柏先生の顔をみると、城谷先生の方を見ながら口の端をあげている。
意地悪な質問。
「そんな、ないですよ。」
うまい言葉が見つからなかった。
そこへ美輝と城谷先生が来る。
学年旅行が終わってから美輝と私は呼び捨てで呼び合う仲になった。
「梓葵、住所聞けた?」
「うん。教室戻ろっか。」
その時柏先生が美輝に言った。
「本田さんは担任の私には暑中見舞いくれないのかしら?」
「えっ。じゃあ書きます。住所教えてください。」
「冗談よ。じゃあってなによ。」
そう言いつつも美輝は柏先生に住所を書いてもらっていた。
「宮沢さんは俺には暑中見舞いくれないの?」
「え?」
城谷先生は私の眼を見てそう言う。
「書いていいんですか?」
「書いていいもなにも。」
「じゃあ教えてください。」
「はいよ。変なもん送ってくんなよ。まあ本田と違ってそんなもん送らないか。」
ははと城谷先生は笑いながらペンを滑らせる。
美輝と職員室を出た。
一日中足が軽かった。