Reminiscence -追憶-

愛してはいけない人 愛されてはいけない人

2017-11-11から1日間の記事一覧

81 先生との電話

城谷先生から連絡先をもらって三ヶ月が過ぎた。 なかなか決心がつかなかった。 なにか理由をつけて電話しよう。そう思っていたところに大学の受験についての話が出始め、その話をしようと思い電話をすることにした。 電話の子機を手に取る。 プルルルルプル…

80 手紙④

手紙を出してから三週間。城谷先生から手紙の返事が来た。 宮沢梓葵様 手紙ありがとう。 元気にしてますか。 宮沢さんに英語を叩き込むと言ったのに、何も言えずに退職してしまって本当に申し訳なかった。 俺は今も英語の教員をしています。そしてバレー部の…

79 手紙③

美輝の言葉を聞いていてもたってもいられなくなった。 その日家に帰って、すぐに城谷先生に手紙を書いた。 城谷先生がいなくなって驚いたこと。英語を頑張っていること。そして感謝の気持ち。

78 手紙②

私も文系コースに進んだことで美輝とはまた同じクラスになった。 「そうそう、この前城谷先生に会ったんだよ。部活の試合に来てさ。」 「えっそうなの。元気だった?」 城谷先生に会えたなんて羨ましい。 「それで梓葵のこと気にしてたよ。頑張ってるかって…

77 手紙①

城谷先生がいなくなってからも英語は続けた。 恥ずかしくないように。 高校二年生。 また桜の季節。去年は前髪を切り過ぎたんだった。 新任の先生紹介。 もうどこにも城谷先生の姿はない。 なんでいなくなってしまったんだろう。どうして。 それを繰り返して…

76 突然の別れ②

優しかった城谷先生がいなくなるなんて想像もつかなかった。 英語を教えてくれるって言ったのに。 やっと英語が好きになったのに。好きになれたのに。 泣いている子もいた。 私は不思議と涙は出なかった。 城谷先生が辞めたことに関して様々な噂が立った。 …

75 突然の別れ①

十二月終業式。 かなり寒い。 指を擦り合わせる。 集会堂の埃っぽさにはもう慣れた。 校長先生の話は相変わらず長い。 「ええと、最後にお辞めになる先生がいらっしゃいます。」 こんな時期に、誰だろう。少しざわついた。 「英語の城谷柚先生です。」 誰。 …

74 意志

「城谷先生。少しお時間いいですか。」 「おう、どした。」 少しして、私は進路を変えた。本来はもう変更できないと言われている期間。 しかし皆が変更しているのを知り、私も決心した。 英文志望にする。 そう城谷先生に伝えた。 「そうか。嬉しいな。俺が…

73 帰り道②

「お待たせ。じゃあ帰るか。」 城谷先生が声を出しながらこっちに来る。 一緒に帰るの?私たちは三人で並んで駅まで歩いた。 電車に乗る。 美輝と城谷先生は楽しそうに話している。 私は相槌を打つだけ。 私の最寄駅。 「じゃあここなので。美輝バイバイ。さ…

72 帰り道①

球技大会前、一年C組の委員としての最後の仕事。 美輝と私は城谷先生の元へ、近隣の皆さんへの言葉を提出しに行った。 「ほい。確認しとくよ。お前ら今帰り?」 「はい。そうです。」 「ふーん、じゃあこれ持って校門でちょっと待ってて。」 そう言って小さ…