57 犬⑨
午前三時。
美輝がソファーの上で膝を抱えながら何度も大きなあくびをしている。
私もそれにつられる。
美輝がそろそろ戻ると言う。
「戻るのか。さすがに見回りの先生いないと思うから。もう遅いから部屋戻ったらすぐ寝ろよ。腹出したまま寝るなよ。あ、ちゃんと歯磨きもしろよ。」
お母さんみたい。
「遅くまでありがとうございました。」
「先生寝坊しないでね。」
美輝は相変わらず冴えたことを言う。
「しないよ。お前らのが寝坊するなよ。じゃあまたな。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
声を揃えて言う。
おやすみなさい。
先生とこの言葉を交わすのは不思議。
寝息。部屋に戻るとみんなの寝息が聞こえた。
私と美輝も布団に入り、すぐに眠りについた。