20 英語⑨
緑の黒板に白いチョークが走る。
城谷柚
「はじめまして。みなさんの英語を担当する、しろやゆうです。主に英語の読解を担当します。」
しろやゆう。
しろやゆうだった。男だった。
「さっきも誰か言ってたけど、名前かな。女の人に間違えられることも多い。
ゆずとかね。ただ、担当教員紹介の時みんないたろ?名前と顔くらい一致しといてくれよ。」
クラス全体が和む。
静かな笑い。
授業の流れを説明。予習について。
それだけで授業は終わった。
「イケメンだよね。」「えー。顔は普通だよ。爽やか系?」
そうだ。あのとき。周りの子も話していたのは城谷先生のことだったのだ。
メガネを作っておくべきだった。頑なにメガネを拒否しなければよかった。
レンズ越しに見える世界も今よりきっと悪くない。
恥ずかしい。
美輝とお手洗いに向かう。
「城谷先生ね、バスケ部の顧問なんだよ。梓葵ちゃん、女の先生だと思ってたの?」
必死に手を洗う。赤インクが取れない。
「目が悪くて見えなかったんだ。それに真剣に教員紹介聞いてなくて…。」
美輝と笑い合う。
水の雫が鏡に飛んだ。