61 面談②
「なんでか聞きたい?」
「聞きたいって言うか。まあ、そうですね。」
「なんだよ、それ。長くなるけどちゃんと聞けよ。俺さ、宮沢さんと同じ歳の頃理工に行きたかったんだよ。特に理由はなかったんだけど。それと実は英語が大の苦手だったんだ。」
「え、そうなんですか。私と一緒じゃないですか。」
「そうだな。まあ実は宮沢さんよりも点数は悪かった。笑えるよな。それでいま英語の教師やってんだぜ。」
「笑えるなんてそんなことないですよ。」
「そうか。俺毎日適当にだらだら生きてたんだ。部活はしっかりやってたけど、それ以外に目標もなくて。でもさその時の俺の英語の先生がすごくいい先生だったんだ。一言じゃ表せないけど。英語で名言ばっか言う先生でさ。英語の成績が最下位の俺に、分厚い洋書渡してきてさ、『これを読め。』なんて言うの。」
「うわ、鬼だ。」
「だろ?俺もそう思ったよ。それで会うたびに俺に言うんだ。『あの洋書はもう読み終わったのか。』って。なんなんだよって思ったけど、あまりにも言われるからちょっと読んでみたわけ。そこから英語にハマったわけよ。」
「なんでですか。」
「なんでだろな。」
「ちょっと、それ答えになってませんよ。」
「はは。まあそうな。でもこれだけは覚えておけよ、宮沢さん。俺は味方だ。絶対に力になる。いつでも質問してこい。遠慮はなしだ。宮沢さんの英語叩き直してやる。」
「先生も鬼ですね。」
「俺は優しい方の鬼だよ。宮沢さん教室戻るのか。一緒に行こうぜ。」
そう言って城谷先生は私の肩を二回叩いた。